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読みやすさが可笑しさをとめどなく後押しする一冊
イン・ザ・プール
奥田英朗/文藝春秋
840円
ビットウェイブックス
どこでも読書
何年も小説を読んでいないという方にお勧めの、ウォーミングアップに最適な一冊。
文体も平易で大変読みやすく、漫画を読んでいるかのように一気に読めます。

デブで注射フェチでどこか患者の病状を喜んでいるような変わった神経科医「ドクター伊良部」。彼の元へやってくる様々な患者とのやりとり、騒動がドリフのように面白おかしく綴られています。とにかくクスッとせずにはいられない面白さです。電車内のような人の多いところで読むのはお勧めできません。そのくらい可笑しさ爆発です。

表題作を含め、4編収録されており、どれも変わった症状の患者が登場します。どうみてもおかしな症状なのに、なぜか読んでいる自分、あるいは自分の過去の記憶と重ねてしまうのが不思議です。

患者たちは伊良部に出会うと一様に胡散臭さを感じます。ところが問診(というよりは伊良部の一人しゃべり)を受けるうちになぜかこのおかしな医者にひきこまれていくのです。それは伊良部が神経科医として、患者の気持ちをわかろうとする人として、極めてマトモな発言をすることに起因します。

表題作 イン・ザ・プール より
「つまりストレスなんてのは、人生についてまわるものであって、元来あるものをなくそうなんてのはむだな努力なの。それより別のことに目を向けた方がいいわけ」

こんなマトモな発言をしておいて、そのあとすぐに無茶な提案をしたりするので、患者はもちろんのこと、読んでいる私もずっこけそうになりました。

日ごろ疲れた心がなんとなく軽くなる作品です。
by masaki_graffiti | 2005-03-15 06:32 | 書評/読書日記


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